SNS採用活動の注意点とポイント

SNSの活用が世代を問わず広まってきている現代。加えてLinkedInの登録者も増えてきている昨今。SNSでの採用活動、いわゆる『ソーシャルリクルーティング』を毎日のように見かけています。

SNSに会社の名前を書いている以上、「これは、あくまでも個人の意見です」と言ったとしても、通用しないのは皆承知の事実。

会社名も名前も明かさずに個人の意見を書く場合、「個人の意見です」と書いても良いとは思うのですが、会社の看板を出してしまっている以上ある程度の責任を持った発言をしなければいけません

採用は人権にも関わること、つまり法律上で禁止されている言い回しなども多く、うっかり発言が命取りになることも往々にしてあります。

どこの会社も「自社にとって良い人を採用したい」と思うのは当たり前のことだと思います。

では、SNSを活用しての採用活動を上手に行うコツはあるのでしょうか。

本日は、かなり真面目に書いていこうと思います。

①ソーシャルリクルーティングとは

②求人をSNS上に掲載する時の注意点とは

③自社にとって魅力的な人を採用するコツとは

この三本立てでお話を進めていきます。

①ソーシャルリクルーティングとは

上記にもありますが、「SNSを利用した採用手法」をソーシャルリクルーティングといいます。恐らく現在のSNSでの採用方法は二分されていると思います。一つ目はTwitter。二つ目はLinkedInです。

Twitterでの採用は主に20代~30代前半をターゲットにしているかと思われます。主にベンチャー、スタートアップ企業が人材募集する時に使用する傾向にあると思います。

一方、LinkedInでの採用は主に30代以上。人材業界では「即戦力」と言われる世代以上の採用をターゲットにしているかと思われます。(厳密に言うと、「即戦力」とはビジネスマナーや報連相などのお作法を携えており、その業界、職種の経験を既に持っている人、を意味するため20代でも即戦力となる人はたくさんいらっしゃるのも事実です。)

こちらでは外資系企業の採用もしくは人材紹介会社(いわゆるエージェント)、ヘッドハンターが人材募集する際に使用する傾向にあると思います。これからは日系企業、ベンチャー・スタートアップも触手を伸ばすこと間違いないです。

あくまでも私の観測値ではあるのですが、SNSを活用して成功を収めている企業は極わずかだと思います。個人として成功している「個人」はいらっしゃるのですが「企業」という団体で成功しているケースは本当に稀だと思います。逆に、SNSを活用して失敗をしている企業、個人の人は残念ながら多くお見受けしているのが実情です…。

つまり、ここでお伝えしたいことは「ソーシャルリクルーティングは思っている以上に難しい」ということです。

採用代行やSNSマーケティング会社、CMにお金をかけたとしてもすぐに成功するものではなく、ゆっくり、じっくりとSNS自体を育てていく必要があるのです。同時に、「求人掲載の最低限のマナー」を求人掲載する人、一人一人が認識している必要があります

2016-2017年頃まではソーシャルマーケティングという言葉自体に馴染みがなく、本格的に行っている人も少なかったため「求人掲載したら採用成功した!」という企業はあったのですが、時代も変わり、掲載したら成功する、というものはなくなりました。

ここには労働者の「働く」ということに対しての価値観がコロナを機に大きく変わってきているということもあると思います。

「自分らしく働く」ということを意識し、会社のために属すという考え方よりも自分の人生に属しており会社はあくまでも自分の職業人生の中の一部分であり、「今」属しているだけのところ、という認識に変わってきています。

このような意識の変化もあり、求人を掲載したら採用が成功するというのは幻想であり、会社の存在目的や社会的な意義を謳いながら、求人を見てくれる人にとって魅力的な書き方を追求していく必要に迫られています。

では、魅力的な求人を書き上げるために、会社の良い部分、魅せたい部分だけを見せてよいのか、というと、そうではないのも頭の片隅にでも良いので入れておいていただきたいと考えています。

②求人をSNS上に掲載する時の注意点とは

まずは、どのようなことに注意すれば良いのかをいかにまとめてみました。法律上、禁止されている文言等もあるので、SNSでの求人掲載時にはご注意ください。

禁止表現ⅰ:性差別表現(男女雇用機会均等法)

禁止表現ⅱ:年齢差別表現(雇用対策法)

禁止表現ⅲ:特定の人を差別・優遇する表現(労働基準法)

禁止表現ⅳ:実態と異なる好条件(労働基準法・最低賃金法 他)

大事なところですので、一つずつ例を挙げていきます。

ⅰ:性差別表現

こちらは男女雇用機会均等法で定められています。

「出張が多い仕事なので男性募集!」や「フロアに立っていただきたいので女性募集!」などの文言は禁止されています。営業マン、看護婦、ウエイター、などの表現も禁止されています

ⅱ: 年齢差別表現

こちらは雇用対策法で定められています。

SNSでよく見るのはここの表現に関して。「25~35歳の人を募集します」や「40-45歳の人を募集します」の表現は要注意です。

組織構成上、若手が少ない、や次期管理職候補がごそっといないので採用しなくちゃいけないんです。というお話はよく耳にするのですが表立って年齢のことを書いてはいけません。

そもそもその年代の人が少なくなってしまったのは今までの採用手法や社内人材の満足度向上を鑑みなかった企業側に問題があることが多いのですが…この件に関しては、今回の主題ではないので置いておきます。

あくまでも「公正採用」が日本の法律上の取り決めでありますので「弊社だけは大丈夫だろう」ということはありません。もちろん、個人の発信においても「大丈夫」はありません。

万が一、25-35歳の方を採用したい、と思っていたとしても「年齢不問」という表記をするか、もしくは年齢に関する表記はしない、という選択肢になります。

その会社にとって良い人材=本当に25~35歳だ、ということは案外なかったりもするのでターゲットとしていた年齢層ではない人からの応募も「会社のチャンスかもしれない!」と捉えてお会いしてみる方が良い時もあると思います。

ましてや「個人の成長」という意味で言うと、全然ターゲットとしていなかった人との出逢いから多くの気付きも生まれ、新たな視野が広がる。そう意味からしても、個人的には会ってみる、話してみる、ということはオススメ致します。

ⅲ: 特定の人を差別・優遇する表現

こちらは労働基準法で定められています。

最近はあまり見られなくなってきたのですが、外国人の方NGや日本人のみ採用します、などの文言です。また「特殊部落」というような部落差別に繋がる文言も禁止されていた李、〇〇県にお住いの方、などの住んでいる地域に関する文言も禁止です。

加えて、心身の障害や身体の特徴に関すること、コロナ禍においてはワクチン接種等の有無、などの文言も禁止事項に入るようになっておりますので注意が必要です。

ⅳ: 実態と異なる好条

こちらは労働基準法と最低賃金法で定められています。

求人を魅力的に見せるために、本当は500万円上限の年収条件にも関わらず「600万円前後」など誇張するような表現は禁止されています。

最近の手法では「800万円以上の転職に成功」や「年収UPでの転職に成功」などの文言を謳う広告やメディアも増えてきておりますが、個人的には人材流動性を恣意的に高めるような表現は控えて欲しいと願っています。

実際には、ある一定の業界がコロナの影響もあり好調の波に乗り賞与が増え、結果的に年収を上げての転職が成功。という事例はあるのですが、これらはあくまでも一部分の業界だけであって、全ての人が年収を上げた転職に成功する。ということは現実的に不可能だと言い切ることができると考えています。

ビジネスSNSと言われているLinkedIn上でも上記4つに該当してしまうような表現を使用している方は多く見受けられますので、十分にご注意ください。

会社への評判だけでなく、個人として積み上げてきたLinkedInでの信頼値も下げることに繋がりかねません。

③自社にとって魅力的な人を採用するコツとは

と、注意喚起をし、ソーシャルリクルーティングに手を出しにくいような煽りをしてしまったかもしれません。そして、ここまで読んでくださり気分を害されてしまった方も、もしかしたらいらっしゃるのではないか…と心配しております。私の表現に稚拙な部分や意図が伝わりにくい表現がありましたら大変申し訳ございません。

他意はなく、皆様に誰も傷つけることなく、そして揚げ足を取られないように健全にソーシャルリクルーティングを活用していただきたいと思い記載しておりますこと、ご承知おきいただけますと幸いです。

最後の章、こちらではソーシャルリクルーティングを活用して自社にとって魅力的な人を採用するコツ、をお届けいたします。

結論から申し上げます。

一朝一夕では魅力的な人は採用できません。

成功に近づくためには二つのステップが必要だと考えています。

一つ目は「社内での採用定義をよ~く話し合うこと」

二つ目は「求人掲載する人がSNSを育てておくこと」

社内で採用定義をしっかりと話し合っていても、SNS上で求人掲載をする人が「誰?」と思われてもダメです。逆に、求人掲載をする人が「あの人ね!」となって募集は来るとは思いますが、採用には至らない可能性が高いと思います。それは社内での合意形成が取れていないためです。会社が求める人材。組織が求める人材。採用決裁者が求める人材。現場が求める人材。それぞれにばらつきがあるからです。

この辺りは人材紹介会社のコンサルタントの腕の見せ所でもあるかもしれません。(※とはいえ採用企業側が人を大事にする姿勢がないと、いくらエージェントが頑張っても正直意味はないです)

上記の通り、まずは社内での話し合いをよく行っておくことが大前提です。と同時に、SNS上で発信する人のアカウントを育てておく必要があります。

アカウントを育てる、というとビジネス色が強くなってしまい、誰もアカウントを持ちたくないと思います。理想を言えば、個々人が「将来的なポータブル資産を蓄えておく」という認識でSNSを活用している状態が最良かと思います。

企業側も「企業人として責任をもって行動してください。〇〇は発言しないでください。」などの無用の制限をかけることは極力避けること。加えて「企業を辞めた場合でも、そのアカウントは個人で使用して大丈夫だからね。」というスタンスを最初から見せてあげることも、今の時代非常に重要です。

その企業でしか使えないアカウントのために、SNSを頑張るという時代ではなくなっておりますので、ここの認識のズレがないように企業は注意しなくてはいけないですね。

ここまで記載し、ようやく「個人のSNSを育てる」という段階に辿り着きます。

個人のSNSを育てるには1ヶ月では育ちません。既にメディアに出ている。元俳優/モデルです、という場合でない限り、最初は皆ゼロからのスタートです。

良くある話なのですが、Twitterでは1万人以上のフォロワーがいます。という人がLinkedinに参入し、そのままの姿勢で投稿する。誰も反応しないんです…。何故なら、誰もその人を知らないから。そしてTwitter界隈では少し有名なことを背景に若干マウンティング投稿を連発する。結果、誰からの反応も得られずLinkedinから姿を消していく…。

LinkedinからTwitterに参入する場合も同じくだと思います。

新しいSNSに参入する場合は、「初めまして!」の気持ちで謙虚に、ゼロからスタートできる環境を楽しめると良いですよね。

SNSを育てるために行うこと。

それは「毎日投稿を継続していきましょう」ではないです。

・自分のプロフィールを整えましょう

・日々の投稿者へのコメントやイイネを継続していきましょう

ということです。

いきなり投稿し始めるのは正直ハードルが高いですし、企業に属している場合は何を書いたら良いかわからない。誰かに見られるのが恥ずかしい。という人も多いかと思います。そのため、オススメとしては投稿している人を応援、賛同し学びを得ている感謝を込めてコメントし交流を深めていくことです。

この活動を続けていると、ある日「そろそろ投稿したいなあ」という思いに変わる日が来るかと思います。その日が来るまでは、コメントやイイネ、イベントへの参加を通して交流を深めながら、「自分もここにいるよ!」というアピールを徐々にしていくことが大事です。

そしてプロフィールも同時並行で整えていくこと。

誰がどこの企業に所属していて…という触りの部分は必要です。しかし一番、必要な部分は「その人がどのような想いを持って、SNSを使用しているか。採用活動をしているのか。」なんです。

今までの実績を並び立てても、そこにその人の想いが載っていないと今の時代は有象無象の内の一人になってしまいます。

・何故、採用活動を行っているのか

・どんな背景や未来図を持っているのか

・携わる人にどんな未来になって欲しいのか。それは何故か

あたりは必須項目になるかと考えています。

最後に

現在、Linkedinでは企業という団体において活用成功している例を私が見る限りでは成功していません。

初めての成功企業として、エヴァンジェリストになるために企業内でSNS活用戦略会議を真剣に行い、お題を3つくらいに絞り、仕事だけでなく日常生活から見えたお題に対して投稿していく、というスタイルを確立させても良いかもしれません。

私自身、せんのみなとはまだ二人の組織ではありますが、名前が浸透し、LinkedIn上では会社としてよく名前を目にするな~という存在になってきていると感じています。

企業×SNS活用にてお力になれることも多分にあると思います。個人としてSNSを将来のための資産としてお力になれることも多分にあると思いますので、気になる方はお気軽にDM,コメントくださいませ。


文:せんのみなと 共同代表 長嶺将也

長嶺のリンクトインアカウント: https://www.linkedin.com/in/masaya-nagamine-sennominato/