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「昨対比」で決めるのは危険!経営戦略と直結させる、現代の採用予算策定マニュアル【計算シート付】

その予算額に「経営的な根拠」はありますか?

「来期の採用予算、とりあえず前期と同じくらいで」
「売上が厳しいから、採用費は一律10%カットしよう」

来期の予算策定シーズンになると、会議室でこのような会話が交わされていないでしょうか。 もし、御社の採用予算が「昨対比(去年の実績)」や「感覚値」だけで決められているとしたら、それは経営戦略上、非常に高いリスクを抱えています。

なぜなら、採用市場は「生き物」であり、去年と同じ金額で、今年も同じ人数が採れる保証はどこにもないからです。また、経営目標(売上目標)が変われば、必要な人材の質や量も変わるはずです。

現代の採用マネジメントにおいて求められるのは、「経営目標を達成するために必要な投資額」を論理的に算出し、投資対効果(ROI)で判断するスキルです。

本記事では、特定の外部パートナーに依存しない、一般的かつ標準的な「戦略的採用予算の策定手順」を解説します。記事末尾には、自社で計算できるシミュレーションシートもご用意しました。

「コスト(経費)」ではなく「投資」として捉える

まず、予算策定の前提となる考え方をアップデートしましょう。 従来の管理会計的な発想では、採用費は「なるべく抑えるべきコスト(販売管理費)」でした。

しかし、人的資本経営が叫ばれる現代において、採用費は「未来の利益を生むための投資」です。 ここで重要な指標となるのが「空席コスト(Cost of Vacancy)」です。

  1. 採用費(投資): 人を採用するためにかかるお金
  2. 空席コスト(リスク): 必要な人材が採用できないことで失う利益(機会損失)

予算を策定する際は、「いくら安く済ませるか」ではなく、「空席による機会損失(リスク)を防ぐために、いくらまでなら投資してよいか」という視点からスタートします。これが経営戦略に基づく予算策定の第一歩です。

同時に、現代の採用活動が静かに、けれど急速に変化していることを認識することも重要です。

  1. かつて(〜平成): 事務処理・管理業務(応募してきた人をさばく→事務処理能力があればOK)
  2. いま(令和〜): マーケティング・営業活動(採用したい人に振り向いてもらう→会社の顔としてエースが必要)

現代の採用は、顧客(求職者)に選ばれるための「戦略」と、情報を届けるための「投資」がなければ成立しません。 「経営戦略(売上目標)」を達成するために「営業予算」が必要なのと同じように、「人材戦略(採用人数)」を達成するためには、根拠ある「採用予算」が不可欠なのです。

地域企業の採用成功事例も併せてお読みください。

採用予算を導き出す「3つの算出アプローチ」

では、具体的な金額はどう決めるべきか。 一般的に用いられる算出方法は以下の3つです。これらを組み合わせ、妥当なラインを探ります。

積み上げ法(ファネル逆算型)

最も実務的で精度の高い方法です。過去の自社データ(歩留まり)から逆算します。

  1. ・目標採用数:3名
  2. ・必要な応募数:30名(採用率10%の場合)
  3. ・必要なクリック数:3,000回(応募率1%の場合)
  4. ・必要予算: 3,000クリック × クリック単価(CPC相場) + 媒体掲載費

相場単価法(市場相場型)

採用競合や市場平均の「採用単価(CPA)」を基準にする方法です。

  1. ・目標採用数:3名
  2. ・市場平均単価:50〜80万円(職種による)
  3. ・必要予算: 3名 × 80万円 = 240万円

成果期待法(ROI型)

その人材が入社して生み出す利益から算出する方法です。

  1. ・入社後の想定粗利:年間1,000万円
  2. ・投資回収期間:半年で回収したい
  3. ・上限予算: 500万円まで投資可能(※理論上の上限)

カテゴリ別マトリクス法(中~大規模採用向け)

年間10名以上の採用を行う企業で、最も推奨される算出法です。
多くの企業が陥る失敗に、「全社の平均採用単価」で予算を組んでしまうケースがあります。
例えば、「新卒(単価50万)」と「ハイクラス中途(単価200万)」と「パート(単価5万)」をすべて混ぜて、「昨年は平均30万円だったから、来年も1人30万円」と予算を組むとどうなるでしょうか?
結果は、「ハイクラス人材の予算が足りずに採用失敗」するか、「パート採用に予算をかけすぎる無駄」が発生します。これを防ぐために、職種や属性ごとにカテゴリを分け、個別に単価を設定して積み上げる「マトリクス法」を用います。

  1. ・新卒:10名 × 50万 = 500万
  2. ・営業:5名 × 80万 = 400万
  3. ・パート:30名 × 5万 = 150万

このように「属性ごとの個別予算」の合計値を出すことで、精度の高い予算策定が可能になります。

多くの企業では、積み上げ法でベースを作り、相場単価法で現実的な補正をかけ、成果期待法の範囲内に収まっているかを確認するプロセスをとります。

採用費よりも怖い「機会損失額」を意識する

中途採用の平均採用単価は、例年100万円約150万円程度で推移しているといわれています。(リクルート 就職みらい研究所「就職白書)こちらの採用金額を元に考えてみます。

  1. A案: 採用費100万円をかけ、1ヶ月で採用する(コスト100万、機会損失額なし)
  2. B案: 予算を割かず0円(ハローワークのみ)で粘り、採用に7ヶ月かかる(コスト0円、機会損失額500万)

現代的な予算ポートフォリオの組み方

総額が決まったら、次は「配分」です。 現代の採用では、単に求人広告を出すだけでなく、多様なチャネルへの投資が必要です。一般的には以下の4つのカテゴリに分類して予算を組みます。

A. 母集団形成費(Flow:短期的な集客)

  1. ・求人媒体掲載費、Web広告費、SNS広告費など。
  2. ・ターゲットの目に触れさせるための「認知獲得コスト」です。ここを削ると応募自体が来なくなります。

B. 採用基盤構築費(Stock:資産化)

  1. ・採用サイト制作・改修、採用ピッチ資料作成、動画制作、ATS(採用管理システム)利用料など。
  2. ・集めた応募者の「意欲を高める」ための装置です。ここが弱いと、いくら広告費(A)をかけても応募に至りません。

C. ダイレクトリクルーティング費(Attack:攻め)

  1. ・スカウトサービスのデータベース利用料、送信費など。
  2. ・待ちの姿勢では採れない優秀層へアプローチするための費用です。

D. 外部連携・成果報酬費(Success:保険)

  1. ・人材紹介エージェント手数料。
  2. ・難易度が高いポジションや、急募時の「保険」として確保しておきます。

失敗しないポイント

よくある失敗は、予算の100%を「A(媒体)」と「D(紹介)」だけで埋めてしまうことです。これではノウハウが自社に残らず、永遠にコストがかかり続けます。 予算の10〜20%程度は必ず「B(基盤構築)」に投資し、来期以降の採用力が上がる仕組みを作ることが、中長期的なコストダウンに繋がります。

採用活動は、以下の「両輪」が揃って初めて前に進みます。

  1. 魅力の言語化・戦略:ターゲットに「応募したい」と思わせる力。 これは、社内の優秀な専任人事、もしくは外部の専門家(コンサルタント)が、時間と知見を投下してつくり上げるものです。「誰でもできる仕事」ではありません。
  2. 母集団形成・露出: ターゲットの目に触れさせる力。 求人広告、ダイレクトリクルーティング、SNS広告などの「媒体費」がここにあたります。

【成果 = 戦略(プロの仕事) × 露出(媒体費)】

どんなに多額の広告費(媒体費)をかけても、その求人票の中身(戦略)が「誰にでも書けるありきたりな内容」であれば、応募は来ません。逆もまた然りです。

まとめ:予算は「根拠」があれば承認される

「予算がもらえない」と嘆く採用担当者の多くは、その根拠が「去年と同じだから」「他社もやっているから」といった弱いものになりがちです。

・この人数を採らないと、経営計画の○○万円の利益が失われます(空席コスト)

・過去のデータから逆算すると、最低でも○○件の表示が必要で、それには○○万円の実費がかかります(積み上げ算)

この2つのロジックが揃っていれば、経営陣も投資判断がしやすくなります。 ぜひ、来期の予算策定は「昨対比」を脱却し、「戦略的投資」としての予算書を作成してみてください。

そのための補助ツールとして、一般的な採用プロセスに基づいた「採用予算策定シミュレーションシート」をご用意しました。下記よりダウンロードし、計算にご活用ください。

無料ダウンロード

3つの視点で適正額を算出する 採用予算策定&シミュレーションシート

https://forms.gle/gxNAUYRZbwyZwtRy5 (ダウンロードはこちらをクリック)

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